TVアニメ『天官賜福』第2話解説

TVアニメ『天官賜福』第2話より
さて中国アニメ『天官賜福』第2話の解説です。
といっても、2話にはそれほど道教的に解説すべき内容はないですね。
『天官賜福』第2話あらすじ
羽化昇天したときに天界に被害を与えたため、地上に起きているたたりを鎮めに行くことになった太子殿下・謝憐。
花嫁に扮して山中に入っていくと、指に赤い糸を結わえたイケメンの怪しい男が現れました。
男に連れられていく太子。
ヴェールを開けられそうになった太子が身を引いてかわすと鬼花婿は無数の蝶に変じ去っていきました。
太子は、男が鬼花婿が張った結界をたやすく破ったこと、そして鬼花婿の手下のはずの狼が彼に対して怯えを見せたことから、本当に鬼花婿なのか疑いを持ちます。
原作ではこの男は「鬼使神」と書いてあって鬼花婿かどうなのか巧みにぼかしていました。
男が去ったあとに前を見ると明光廟という立派な廟があります。
しかし、地元の人はこの廟の存在を知りませんでした。どうやら鬼花婿の結界によって見えなくされていた様子。
廟内に入ると異臭が漂い、そこにさらわれた花嫁が並べられていました。
そこに、童女の歌声とともに入ってくる黒い影。
太子が迎え撃とうとすると黒い影が逃走。
そこに、鬼花婿をとらえて賞金を得ようとする男たちがやってきます。
そしてそこには太子の女装を手伝ってくれた麓の村娘・小蛍もついてきていました。
賞金稼ぎたちは廟内に入り花嫁を発見。
これを連れ帰れば家族に賞金をもらえるに違いないと触れようとしたとき、太子は「陰の気に触れてしまうぞ」とやめさせようとします。
このへん原作だともっと長いセリフです。
那盖头能阻隔尸气和阳气。你们人多阳气太旺,若是给它们吸进去,难保不会发生点什么。
「ヴェールを上げてはいけない!そのヴェールは尸気と陽気を隔てている。君たちは陽気が旺盛だから死体に吸われると何が起こるかわからないぞ」
小蛍が彼らの行いをやめさせようとして、彼らのリーダー小彭頭の怒りを買ったとき、外から石つぶてが飛んできました。
賞金稼ぎの男たちは石つぶての主を追って森に入るも、すぐに血まみれになって戻ってきました。
それは木に吊るされた死体から流れた血だったようです。
それを見た南風は鬼花婿が青鬼と関係しているのかと推測。
青鬼とは「絶」に近い魔物で死体を木にかけるのを好むのだとか。
そこで太子が蝶になって去った男のことを話すと扶揺はあわててこの場を去ろうとします。
扶揺によれば蝶の主は鬼花婿や青鬼どころではない危険な存在のようです。
しかし太子はまだ事件が解決していないからと扶揺に応援を呼びに行かせてその場に残りました。
するとそこに賞金稼ぎたちに捕まった包帯ぐるぐる少年が引き立てられてきました。
石つぶてを投げたのはその少年らしい。
実は小蛍はその少年が心配でついてきていたのです。
少年は山に住み、小蛍が食べ物を与えていました。
明光廟まで戻った一同。
太子が小蛍に、こことは他に明光廟がないかと聞くと、以前はあったが火事が続き、明光将軍ではおさめられないからと南陽将軍を祀るようになったという答え。
それで何か思いついたのか、太子は南風から法力を借り受け、廟の中に戻ります。
太子の推理によれば、先刻去ったのは鬼花婿の影だけで本体は廟内に花嫁のふりをして潜んでいるはず。
しかし、花嫁の死体はすでに賞金稼ぎに持ち去られた後でした。
鬼花婿の正体は、幸せな花嫁に嫉妬した女性。
そのころ、賞金稼ぎたちは動き出した花嫁の死体に襲われていました。
『天官賜福』第2話の用語解説
さてさて、第2話は起承転結で言えば転にあたり、話が大きく動きます。
そのため特に解説しなければいけないようなことはないのだけれど、一応いくつか拾って解説します。
陰の気
賞金稼ぎが死体に触れようとすると、太子は陰の気に触れてしまうと警告します。
生きている人間は陰陽が平衡を保つ太極の状態にあります。
陰陽どちらかの気が増え過ぎたり減りすぎたりしてバランスが崩れた状態が病気です。
陰陽どちらかの気が絶えると人は死にます。
中医学では気は人体を構成する最小の物質だと考え、人が死ぬとその気が失われてそれでお終い。中医学でも魂魄という概念はあるけれど、魂は肝に宿って五臓の働きを活発にさせる気、魄は肺にやどり六腑の働きを活発にさせる気に過ぎず、人が死ぬと失われます。
中医学では魂が単独で存在し続けるなどとは考えません。中医学の徒から言わせてもらえば先祖崇拝などまったく無駄なことです。
しかし、中国の祖霊信仰ではそうは考えません。
古い中国の死生観では、人が死ぬと魂と魄が分離します。
魂は陽に属して天に帰り、死体には陰に属する魄が死体に残っていずれ地に帰ります。
そこから、子孫が先祖の魂魄を礼拝しつづけるといずれ分離した魂魄が再び結びついて生き返るという信仰が生まれました。
生き返るその日のために魂を天に返さず地上にとどまらせるための祭具が位牌で、魄が地に帰らず死体に残るように棺に封じこめて埋めておくのが墓です。
儒教はこうした信仰から発展して、子孫が祖霊信仰を怠らなければ平穏な社会が保たれると説きました。
日本人が仏教の祭具と思っている位牌や墓は、中国仏教が信者を獲得するために儒教からパクったものです。だからまあ、位牌を拝んでそれが仏教のつもりでいるのはちゃんちゃらおかしいことです。
道教では古代の魂魄の観念から三魂七魄という設定が考えられました。
三魂は天界に登る天魂、地府に落ちる地魂、墓地を徘徊する人魂です。
日本で墓場に人魂が出るっていうのはこれをパクったものでしょう。
道教の場合、死んだ人が蘇ることは想定していません。だからそうならないように不老不死になろうというのが仙人です。
また後に死んでから仙人として再生する尸解仙も考えられました。
七魄は喜、怒、哀、懼、愛、悪、欲に宿り、人が死ぬと失われます。
とまあ長々説明してきましたが、つまり死体は陰の存在で、土に埋めていないと陰の気である魄が残っています。
原作では陽気が吸われると言っています。
陰陽の気は本来並立するものなので、陰気だけの存在に陽気を持つ人間が近づくと吸われて、下手をすると死んでしまうという認識だと思われます。
まあ、知らなくても話の内容には関係ありません。
青鬼
日本語版アニメで「あおおに」と言っているし、原作でも「青鬼」なんですが、日本の青い色をしたオニではないでしょうね。
原作でこの青鬼について説明している部分まではまだ読んでいないので詳しいことは不明ですが、鬼は霊のこと、青は五行で木に属し方角は東ということから、木の精霊か東方にいる悪鬼の類ではないかと推測します。
木に死体をかけるのを好むというなら、木の精霊というか木の精霊が悪堕ちした存在かもしれません。
青鬼は「絶」に近いものだとか。その「絶」とは何かはこれから説明されるかもしれないし、アニメ化の範囲では説明されないかもしれません。






