道教の神々:九天応元雷声普化天尊

九天応元雷声普化天尊の名前を知ったのは『第2次スーパーロボット大戦α』でした。

スーパーロボット大戦オリジナルロボットの龍虎王は、古代中国で建造され道術で戦うというアホ設定で大好きです。

その龍虎王のパイロット、クスハ・ミズハが技を出す時に「九天応元雷声普化天尊!」と叫ぶので、調べてみたら道教の神様だったというわけ。

でも多分それよりだいぶ前に安能版『封神演義』を読んだときに見ていたかもしれないけれど、封神のシーンはとにかくだらだら長く続くので飛ばし読みして覚えてなかったのだと思います。

九天応元雷声普化天尊は現実の道教でも祀られる神様の一柱です。

ちなみにクスハは九天応 元雷声 普化天尊という切り方で叫んでいたと記憶しているけれど、九天応元 雷声普化天尊と切るのが正解です。

雷部主宰九天応元雷声普化天尊

雷は自然現象の中でも強力な威力を持ちます。

科学知識がなかった時代、それが天上の神の業と考えられたとしても不思議ではありません。

ヒンドゥー教以前のバラモン教で最高神だったインドラ、我が国の菅原道真公が祀られた天神さまも雷神です。

中国には雷師、雷公と呼ばれる雷神がいました。

その雷神がやたら増やされたのが宋代です。

道教には符術があります。呪文が書かれた呪符を使う呪術です。

宋代にはそうした符術を扱う符?派に「雷法」という術が生まれて流行しました。

雷法は雷神を呼び出して雨を降らせたり、魔物を祓ったりする呪術です。

その雷法から『九天應元雷聲普化天尊玉樞寶經集註』という経典が作られました。

要するに雷法の権威付けです。

この経典で、九天は三十六天を統べ、東南九気から雷門が出て三十六雷を掌握するという設定が作られました。

そして九天の真王つまり雷声普化天尊は神霄玉府に住み

主天之災福 持物之權衡 掌物掌人 司生司殺 檢押啟閉 管鑰生成

天の災福、持物=道教の法器の基準、物や人の掌握、人間の死生、法度の開閉、カギの生成などを主管するとなっています。

法度の開閉というのはよくわからないけれど天の法律の運用という感じかもしれません。

カギはなんでしょうね?カギといっても管鑰とあるので九天に出入りする管理用のカギのように思えます。

雷声普化天尊がまるで天上を統べる万能神のように描かれています。宋代にはまだ天界ヒエラルキーは固まっていなかったこともあるでしょう。

とにかく雷声普化天尊はもともとあった雷神が時代の変遷で少しずつ盛られていったのではなく、いきなり全ての雷神の頂点として生み出されたのでした。

雷声普化天尊は誰か?

いきなり雷声普化天尊として生み出されたためなのか、後年雷声普化天尊の正体に関する設定もいろいろ考えられています。

まず明代につくられた『?代神仙通鑑』では、黄帝がその功により「九天應元雷聲普化真王」に封じられたとしています。

また、豁落靈官王天君が雷声普化天尊だとする説もあります。ただし、これは王天君が「太乙雷声応化天尊」という天尊号を持つため、単に似た神号だから混同されただけではないかと思われます。


王元帥=王天君:新北市湧蓮寺

唐代の刺史で死後「雷霆護國顯應大王」に封じられた陳文玉が雷声普化天尊という説も、これまた道教に取り入れられて「九天雷祖大帝」となったことから混同されたようです。

『封神演義』では、商の太師・聞仲が最終的に「九天應元雷神普化天尊」封じられて雷部二十四位天君を率いることになりました。王天君は雷部二十四位天君の中に入れられているので、『封神演義』の作者は王天君は雷声普化天尊ではないという認識だったのでしょう。

なお、現在の道教はわりと『封神演義』の影響が強いため、雷声普化天尊=聞太師とされている場合もあります。

雷声普化天尊の地位

初出からいきなり高い地位の神様として登場した雷声普化天尊。しかし、道教のヒエラルキーが整えられていくと、さすがに天帝より偉い地位にするわけにはいきませんでした。

現在の道教では、三清を最上としつつ天帝は玉皇大帝とし、その補佐に四御、四御の次に偉い神霄九宸大帝の中に雷声普化天尊が入れられています。


雷声普化天尊:高雄市左営啓明堂

雷声普化天尊の下には天雷、地雷、水雷、神雷、社雷に分けられる「五雷」があり鄧元帥をリーダーとした五雷元帥が率いています。


鄧元帥:高雄市龍虎塔

さらにその下に雷部三十六神将や雷部二十四位天君などがいるので、雷部はかなりの大所帯です。

道教の神々

Posted by 森 玄通