道教の神々:虎爺

今年壬寅年の十二支は虎。
かつて中国には虎が生息していました。
いや現在でも旧満州地域にアムール虎が出没して人を襲ったなんて事件が起こっていますけれど、満州は終戦後に中共がどさくさ紛れに奪った新しい領土なので今言っているかつて中国にいた虎とはまた別の話ですからノーカンです。
とにかくかつての中国には、東は北京から西は四川まで幅広く虎が住んでいて、現在では人工的に繁殖が試みられているアモイトラは除き、野生の虎は全て絶滅したと見られています。
正確に言えば人間の手で絶滅させられたのでしょう。現代のような生物保護の概念がなかった時代、人が生活の領域を広げた結果そこにいた肉食の猛獣を排除しようとするのはしかたのないことだったと思います。日本人だって虎よりはるかに脅威度が低いニホンオオカミを絶滅させています。
ただ、時として人は自らへの脅威を逆手にとって神として祀ることもあります。大きいところだと四神の白虎。国の中央を護る4つの神獣のうち西の護りを任されているのだからその期待度がどれだけ大きいかわかります。
しかしそれとは別に、狭い範囲の小さな守り神とされた虎の神様もいます。それが虎爺です。
下壇將軍
中国における虎爺の信仰はよく知らないので、ここでは中国からの移民によってもたらされた台湾での虎爺信仰を中心に紹介していこうと思います。
なお「爺」は「ジジイ」ではなく尊称です。例えば少年神の中壇元帥も「太子爺」と呼ばれます。
最も基本的な虎爺の設定は福徳正神の乗騎で、常に福徳正神の下に控えているというもの。
台北では福徳正神が祀られる祭壇の下に祀られていることが多いです。

台北市228和平公園内の福徳宮
祭壇の下に祀られることから、下壇將軍という異名も持ちます。

下壇將軍:台南市開基玉皇宮
土地公の乗騎ということで、その土地の福徳正神が担当する地域の守り神としての職能を持ちます。
また、台湾には「虎爺咬錢來」という俗諺があり、財神としての職能も付与されています。

台北市福興宮
虎爺の前には水を注いだ器が置かれていて、ここに小銭を入れてお願いするとそれが後に財となって戻ってくるとか。いわば日本の銭洗弁財天のような役割を与えられているわけです。

台北市中庄福徳宮
これなどは財神としての職能が極端化された例で、ガラスケースの中に虎爺が置かれて直接お金を投げ込むようになっています。
財神としての職能を与えられているためか、福徳正神の乗騎という設定を離れ、別の神様が主祭神の廟でも多く祀られています。

台北市士林慈誠宮
他に子供の守り神という側面も持ちます。

台北市五福財神爺廟
虎なのにお菓子が供えられているのはそのためです。
壇上の虎爺
台湾では、虎爺はほとんどの廟で祭壇の下やテーブルの下に祀られ、拜拜は低く身をかがめて行うことになります。
しかし例外もあり、祭壇の上に祀られていたり、独立した祠を与えられている虎爺も見られます。

台北市萬華三清宮

台北市松山慈祐宮

新北市先嗇宮

新北市板橋慈恵宮
擬人化した虎爺
台湾の廟に祀られる虎爺は、虎っていうか虎のつもりで作られたっぽい少しユーモラスな虎風の神像であることがほとんどです。
しかしごくわずか、擬人化されて祀られている例もあります。
その一つが彰化県の彰邑明聖廟。


こちらは人の体に虎(?)の頭を持つファンタジーっぽい獣人の姿で祀られます。虎というよりは幻の特撮ヒーロー・豹マンみたいですが。
もう一つ、こちらは台北の街をふらふら歩いているときに偶然見つけたもの。
重慶北路の虎神公です。


完全に人の姿の神として祀られています。様式としては、古い時代の土地公の祠に準じているので、土地公と虎爺の信仰がごちゃっと混ざってなんやかやあった結果としてこうなっているのかもしれません。
他にも擬人化した虎爺はいるかもしれないけれど、私自身が見たことがあるのはこの2箇所です。
虎爺ギャラリー
虎爺は虎爺といいつつも、どうも虎には見えない姿の神像が多く、神様というよりゆるキャラのようにも見えます。これは虎がいない台湾に伝えられた後、信仰が広まって想像から像がつくられていったからかもしれません。
















